高度運転支援、そして自動運転実現に向けてのデンソーの技術力はいま、グローバルで果たしてど のぐらいのレベルにあるのか? 忌憚なく申し上げれば、コンペティターである欧州の巨大サプライヤーと比較しても、個々の技術をベンチマークすると性能面ではまったく遜色はありません。むしろ、センシングの領域では我々がリードしている技術もある。たとえばLIDAR などはでンソーが古くから手がけている技術であり、豊富なノウハウを蓄積しています。しかしながら、そうした 個々の技術を組み合わせて、必要とされる機能を自動車メーカーにアピールするのが不得手であり、 それを担うために全社横断組織として発足したのが、私が率いる ADAS(Advanced Diver Assistance System)推進部です。

当部のミッションは、R&D 部門である技術開発センターで創り出された要素技術を組み合わせて、高度運転支援や自動運転のための新たな仕組みを創り出し、事業部門である情報安全事業グループ に提供していくこと。そのためには、さまざまな技術領域をまたいでシナジーを生み出していかな ければなりません。ですから当部の技術者たちは、自らの専門を究めつつ周辺領域も理解して、た とえば「歩行者を検知して自動でブレーキをかける」といった、世の中から求められている機能を どうすれば実現できるのか、フルにアイデアを発揮しなければならない、よりいっそう、技術者の センスが問われる時代になっています。

自動車は、いまや世の中の先端を走るプロダクトです。当社においても、ディープラーニングを活 用した運転支援のための技術を近々発表する予定ですし、次世代移動通信システムの5G も自動車 関連の通信に応用される見込みです。また、デンソーが得意なミリ波レーダーの技術も、民生品で使われているのは自動車関連だけ。さらに、我々はすでに自社技術だけで自動運転システムを構築しており、自動車メーカーへのデモンストレーションを図っています。最先端のテクノロジーを実 用化したいなら、自動車に関わるのが一番の近道。技術者にとってこれほどエキサイティングな開 発テーマはないと思います。
我々が掲げているのは「移動の質(Quality of Mobility)」を向上させること。その「質」というのは、事故のない安全な運転だけではなく、クルマを操ること、クルマに乗ることそのものを、さらに快適にしていくこと。あらゆるテクノロジーを駆使して、未来においても移動手段として真っ先に自 動車が選ばれる社会にしたい。それが自動車を追究していく我々の変わらぬ想いです。

松ヶ谷 和沖

ADAS 推進部長

1989 年 日本電装株式会社(現:株式会社デンソー)入社。半導体結晶成長、高周波トランジスタ、マイクロ 波/ミリ波 IC、ミリ波レーダ、車車間/路車間通信システムの研究開発に従事。
2010 年 研究開発3部長。周辺環境センサ、無線通信の研究開発を担当。2015 年 研究開発1部長。2016 年 ADAS 推進部部長。現在は安全運転支援・自動運転に関わる次世代製品の構想と技術開発とを担当。博士 ( 工 学 )。

松ヶ谷 和沖

ADAS 推進部長

1989 年 日本電装株式会社(現:株式会社デンソー)入社。半導体結晶成長、高周波トランジスタ、マイクロ 波/ミリ波 IC、ミリ波レーダ、車車間/路車間通信システムの研究開発に従事。
2010 年 研究開発3部長。周辺環境センサ、無線通信の研究開発を担当。2015 年 研究開発1部長。2016 年 ADAS 推進部部長。現在は安全運転支援・自動運転に関わる次世代製品の構想と技術開発とを担当。博士 ( 工 学 )。