デンソーは、世界のイノベーションの源泉である地でトレンドの兆しをとらえ、活用に結びつけていくために、アメリカのシリコンバレーに拠点を設け、現在その体制をさらに強化しています。私はいま、こちらの研究チームに所属しています。

私自身が長らく取り組んできたのは、機械学習による運転挙動データの解析。自動運転を実現するためには、クルマが自ら直面する運転シーンを理解し、人間のように判断をしなければなりません。いま私がいるシリコンバレーオフィスの周辺は、自動運転車が日常的に実験走行しているような環境ですが、まだまだ不自然な状況が見受けられます。たとえば、時速35マイルで道路をずっと走っていて、一般のドライバーがスムーズに運転できずにストレスを感じていたり……そうした自動運転車と人間のドライバーが操る車が混在する環境で互いに共存できるようにすることが、私が掲げる大きなテーマです。

アメリカは日本に比べて自動運転に対する取り組みが進んでおり、蓄積しやすい環境にあり、研究に取り組むには格好の場です。さらにデンソーのシリコンバレーオフィスは本格的に立ち上がったばかりです。たとえば現地のスタートアップベンチャーや大学とも積極的に連携し、実験車のセットアップやデータ解析などで協業するなど、こちらで意思決定しながら機動的に研究を進めていける魅力もあります。
ここアメリカでは、政府の支援などもあって “自動運転バブル”の様相を呈していますが、果たして未来に向けてどの方向に進んでいくのか、まったく見えていないのが実状。いま私が手がけている運転挙動データの解析は、自動運転実現へ向けてのアプローチとして取り組んでいる研究者がまだまだ少ない領域であり、ここで確かな成果を上げれば一気に先回りできると考えています。
自動運転に向けた研究開発において、デンソーは大きなポテンシャルを秘めた企業だと思います。AI関連の研究者が多数在籍し、互いに忌憚なくテクニカルなディスカッションができる風土がありますし、私のような少々異質なキャラクターも許容してくれて、好きなようにやらせてくれる度量もある(笑)。まだ確かな答えが出ていないいまだからこそ、ここでチャレンジできることはたくさんあると感じていますし、クルマと人が自然にインタラクションできるような、そんな世界の実現に向けてさらに研究を重ねていきたいと考えています。

坂東 誉司

DENSO INTERNATIONAL AMERICA, INC., Silicon Valley Innovation Center, Manager

2007年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程修了、博士(工学)。同年株式会社デンソー入社。2015年よりDENSO International America, Inc. Silicon Valley Innovation Center, Manager。入社以来、ドライバ支援システムのためのセンシング技術開発、 運転挙動データの解析技術開発などに従事。

坂東 誉司

DENSO INTERNATIONAL AMERICA, INC.,
Silicon Valley Innovation Center, Manager

2007年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程修了、博士(工学)。同年株式会社デンソー入社。2015年よりDENSO International America, Inc. Silicon Valley Innovation Center, Manager。入社以来、ドライバ支援システムのためのセンシング技術開発、 運転挙動データの解析技術開発などに従事。