プロジェクトインタビュー

フラッシュストレージの小宇宙は
人工衛星の
宇宙空間と同じように、
無限の可能性に満ちている。

メモリ事業部 NANDシステムファームウェア設計担当

スマートフォンやゲーム機から、ドローンや自動運転の支援システムまで、キオクシアのUFS(ユニバーサル・フラッシュ・ストレージ)は、進化を続けるデジタル機器に内蔵され、超高速のデータ転送と大容量のデータ保管を担っている。このUFSのメモリを制御する組み込みソフトウェア開発について、若手エンジニアに語ってもらった。

プロフィール

2021年入社
メモリ事業部 NANDシステムファームウェア設計担当 

岐阜県出身。大学では制御工学専攻。前職では3年半、人工衛星の姿勢を制御する組み込みソフトウェア開発に従事。より主体的に製品を開発したいと希望して、キオクシアに転職。

「十分に読み書きできるストレージがあるのに、これ以上開発することがあるのだろうか。」入社前はPCマニアの目で見て疑問に思っていた。

入社の前後で、業務へのイメージに変化はありましたか?

私は入社後、データストレージとして世界中のスマートフォンに搭載されているUFSのファームウェア、すなわちフラッシュメモリを制御するコントローラーのソフトウェアを開発しています。もともとPCやスマホに興味を持っていたので、UFSの仕組みや働き、またキオクシアが先行メーカーの一社で、ハードウェア・ソフトウェアとも自社で開発・生産しているのを知っていました。世界シェアも高いので、「自分発想の主体的なものづくりができそうだ」と期待して転職したのです。

一方で内心、「スマホのストレージって、もう十分に読み書きできているのに、これ以上開発することってあるのだろうか」という疑問があったのも事実です。

実際は、というと、前職の人工衛星の先進的な組み込みソフトウェア開発と比べてみても、UFSの組み込みソフトウェア開発技術は引けを取らない。それどころか、衛星が飛行する宇宙空間のように、ナノオーダーのストレージの小宇宙は無限の可能性を秘めていると分かって、目からウロコの発見でした。

アナログに近い特性を持つフラッシュメモリをソフトウェアの力でいかにうまく使いこなすか。

具体的に、どのような可能性を発見できましたか?

あらかじめお断りしておきます。お客様との守秘義務など、企業機密の壁があるため、「例えば……」といったかたちの抽象的な表現でしかお伝えできないのです。どうかご容赦ください。

どのような可能性があるのか、一例をあげると、「遅くなるのを速くする技」です。最先端のフラッシュメモリには、ひとつのセルに4ビット分のデータを記憶できるようにして、1枚のチップで従来の最大4倍の大容量化を可能にしたものがあります。ビットあたりのコストとスペースを低減できる代わりに、読み書きが遅くなるのがネックでした。それをソフトウェアの工夫で速くできるようにして、革新的なUFSの製品化に成功しました。もうひとつは「DRAMとストレージのスワップ」です。スマホのOSの機能を応用して、DRAMのデータを部分的にストレージ側に移行し、DRAMの仕事をフラッシュメモリに代行させる仕組みを導入します。さらに、通常のスワップではフラッシュメモリへの書き込みが遅くなってしまうのを高速化することで、メモリ全体のパフォーマンスを向上させて、ユーザーがよりストレスフリーにスマホを使えるようにしました。

ちなみに、部署はハードウェア開発、ソフトウェア開発、評価・検証の3部門に分かれていて、新しく開発する製品ごとにそれぞれチームを編成し、連携してプロジェクトを進めます。そこまで自社開発にこだわった体制をとっているからこそ、誰もが多様なテーマを柔軟に追求できて、ますます可能性が広がるわけです。

しかもフラッシュメモリは不揮発性のメモリで、電源を切ってもデータは消えずに保持されます。この「切っても消えない」ユニークな特性ゆえに、デジタル半導体でありながら、アナログに近い不確定な性質があって、例えば電源がいきなり落ちた時にどう対処するか、再起動した時に、どこまで以前のデータを復旧できるか……等々、0か1かでは割り切れない問題が出てきます。こうした課題を、ソフトウェアを使いこなして解決するのが、この仕事の難しさでありおもしろさでもあるというのが、私の実感です。

あまり表には出ないけれど、スマホの使いやすさを支える役割も果たしている。

印象に残っているプロジェクトを教えてください。

海外の大手スマホメーカーのお客様のご依頼を受けて、ハイエンドモデル向けUFSのファームウェアを開発した案件を紹介します。

UFSは国際規格に準拠しているので、同一バージョンで容量も同じなら、どの製品でも基本的な仕様は変わりません。じゃあ、誰が開発しても同じかと言えば、決してそうではなく、ソフトウェアの組み方次第で差別化を打ち出せるのです。詳細は明かせませんが、お客様から独自の機能を付加したいというカスタム要求があり、ご要望に即した仕様の策定から設計、実装、動作確認へとプロジェクトを進めていきました。

こちらから「当社の新世代のフラッシュメモリを導入して、こう動かせば、もっとスムーズにスピーディーにスマホを使えます」といった提案も積極的に行います。やはり、具体的に話せなくて残念ですが、フラッシュメモリを詳しく知る立場から、ストレージの高性能化による操作性の向上をアピールして採用されたケースもあり、世界市場で販売されて注目を集めました。ストレージの話はあまり表には出ませんが、ハイエンドモデルならではの滑らかな動作を支える役割も果たしていると、自分たちの仕事を誇りに思っています。

そうそう、現在主流のスマホ向けの話ばかりになりましたが、自動運転の支援システム等の車載用途、ロボットやドローンの自律飛行・走行を可能にするエッジAIへの適用など、UFSのアプリケーションは多方向に拡大を続けています。マーケットが可能性に満ちているのも大きな魅力であると、私は確信しています。

※本記事は取材時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。(取材日:2025年8月)