機械学習の技術を活用して、
半導体製造プロセスの
最適化や
新材料の開発に立ち向かう。
先端技術研究所 AI・DX技術研究担当
AIが社会を革新するテクノロジーとして広く人々に知られるようになる前から、キオクシアはAIを取り入れた生産技術の研究開発と半導体製造現場への導入に着手し、成果をあげてきた。ここでは、さらにその先の世界を視野に収め、機械学習を駆使したDXを追究している若手を取材した。
2023年入社
先端技術研究所 AI・DX技術研究担当
徳島県出身。大学では化学を専攻。前職は大手製造業の研究員。バイオマスを活用した新製品の開発、製造機械の異常検知手法の開発など多様なテーマに取り組むなかで、機械学習に興味を抱き、AIやDXを探究できる場を求めてキオクシアに転職。
AIを活用して製造プロセスのビッグデータを解析。スマートファクトリーの構築で先行している事実に驚く。
キオクシアに転職を決めたポイントから聞かせてください。
機械学習技術の開発と応用を究めたいと志向していたので、製造業でビッグデータの活用が必須だと思われる企業を探すところから転職活動を始めました。目についたのは、半導体や半導体製造装置のメーカー、化学メーカーなどで、比較検討しながら絞り込んでいきました。
キオクシアを選んだのは、フラッシュメモリの世界市場で高いシェアを占めており、将来にわたって持続的な成長が期待できるうえ、次のような点で機械学習技術の導入に積極的だと想定できたからです。
- ・半導体の製造プロセスでは、大量のデータが得られる。
- ・わずかな歩留まりの変化でも利益に大きな影響を及ぼすため、高度なデータ分析が求められる。
- ・競争が激しく、進化のスピードが速い業界だけに、先進的な技術の導入に対する抵抗が少なく、AIエンジニアが活躍しやすい環境が整っている。
以上の3点は、あくまでも入社前の私の想定ですが、入社後は、当社Webサイトの「スマートファクトリー」のページに詳しく載っている通り、四日市工場などで製造・検査装置から毎日大量のデータが収集されており、AI技術を用いた生産性向上の取り組みが広く導入されていることを実感しました。私が配属された先端技術研究所のAI・DX部門は、そうした実績を踏まえ、さらに将来を見据えた研究を推進しています。
ビッグデータならぬスモールデータ。少ないデータでの予測技術に取り組む。
具体的に、どのようなプロジェクトを手がけていますか?
フラッシュメモリの新規製造プロセスの最適化が代表的な案件です。ドライエッチングの事例で説明しましょう。シリコンウエハー上の薄膜などを削り取って回路パターンを形成する工程で、容器の中でガスをプラズマ化させて加工を行います。ナノオーダーの超精密プロセスなだけに、容器内の温度や圧力、ガスの種類等々、さまざまな加工条件をどう設定するかはとても重要です。新規プロセスの開発では、プロセスエンジニアが実験を通じて加工条件の探索を行います。
実験は時間もコストもかかるので、私は、機械学習や統計的な手法を活用して、実験回数の削減に取り組んでいます。プロセス開発の担当者と連携し、実験データに基づいて、加工条件に応じた結果を予測する機械学習モデルを作成します。この予測モデルを用いて、最適だと思われる加工条件を提案します。その条件を実験で検証し、良い結果が得られればOK、というのが基本的なフローです。
もちろん、実際はそう単純ではありません。新規プロセスの開発では実験データが限られる場合が多いため、予測モデルの作成が難しく、適切な加工条件を提示できないケースが少なくないからです。私はモデルの精度を上げるべく、機械学習に適したデータの集め方を提案する、あるいは、少ないデータ量でも予測可能なモデリングの方法を検討するなど、多角的なトライアルに励んでいます。
膨大な条件探索を効率化。マテリアルズ・インフォマティクスで新材料開発を目指す。
将来に向けて、よりイノベーティブな動きはありますか?
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した新規デバイス材料の開発に期待しています。MIは、特定の物性を有する新材料を発見するために、機械学習などを用いて効率的に材料の探索を行う技術のことです。
材料の物性は、実験で測定するか、物理・化学の法則に基づく計算により予測することが一般的です。しかし、考えられる材料のパターンが膨大になることが多く、一つひとつのパターンについて実験や時間がかかる計算で物性を決定していくのは困難です。そのため、MIの方法を取り入れ、特定の物性を高速で予測できる機械学習モデルを作成する、探索アルゴリズムを工夫するなどにより、従来は困難であった材料の探索が実現できるようになります。
※本記事は取材時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。(取材日:2025年8月)







