中流工程の論理合成を担当。
上流から下流へ、
抽象から具象へ、
SSDの頭脳となる回路を
描いていく。
SSD事業部 SoC技術開発担当
SSDコントローラーは、フラッシュメモリのデータ書き込みや読み出しを制御し、ホストコンピューターとのやりとりを管理するデバイスの頭脳そのもの。それは一体、どのようなプロジェクトワークによって、開発されているのか。次世代コントローラーSoCの回路設計部門で活躍中の若手に話を聞いた。
2022年入社
SSD事業部 SoC技術開発担当
北海道出身。情報工学専攻。学生時代、ロボコンのサークルで活動したのがきっかけで、ハードウェアへの関心が強くなり、前職の外資系ASICベンダーに就職。デジタル回路設計の下流工程に携わるなか、ハードウェアの開発・設計プロジェクト全体を見通せるエンジニアに成長したいと強く望むようになってキオクシアに転職。
半導体業界の実際を肌で感じて、「受託より発注」「水平より垂直」だと確信。
最初に、現在の業務について聞かせてください。
前提として、半導体ハードウェア開発の一般的なフローから説明しようと思います。
- 1)上流工程:回路がデータをどのように処理するか、専用の言語を用いて回路の動作を記述し、RTL(レジスタ転送レベル)と呼ばれる抽象的なテキストを作成。
- 2)中流工程:論理合成というプロセスにより、RTLを具体的な回路構成データであるネットリストに変換。
- 3)下流工程:P&R(Place & Route)といって、チップ上のどこにどの機能ブロックを配置し、どう配線して接続するか。
こうしたフローのもと、部署ではエンタープライズSSDコントローラーのSoC(複数の機能をワンチップに集約したSystem on Chip)の電子回路を設計しています。
ではどうして、キオクシアへの転職を決めたのですか?
私は前職のASICベンダーでP&Rを担当しており、論理合成にも関わっていました。ただし、発注者から受託した案件に応じてチームを組み、発注者が決めた仕様やRTL記述に沿って論理合成やP&Rを請け負う方式で、要するに、複数の企業が工程ごとに業務を分担する「水平分業型」でした。半導体業界では一般的なのですが、回路設計の全体を見通せるエンジニアを志向していた私は、経験を重ねるにつれて、発注側に回りたいと考えるようになりました。
その点、キオクシアは「垂直統合型を堅持している」数少ない発注者です。フラッシュメモリの開発・生産から、SSDなど応用製品の開発・生産まで、一貫して自社主体で手がけています。キャリア採用の選考プロセスもスピーディーだったので、内定をいただいて即決しました。
次世代製品のコントローラー開発に参画。ビッグプロジェクトの景色が俯瞰で見えた。
入社してアサインされたプロジェクトと業務を教えてください。
これまでに2つのプロジェクトをスタートからサインオフまで体験し、現在は3件目に入っています。所属は中流工程のチームで、論理合成及びネットリストとRTLの論理等価性検証が主要な業務です。手応えが大きかったのは、2件目の次世代SSD製品向けコントローラーSoCの開発です。2023年の頭まで、足かけ2年がかりのビッグプロジェクトでした。今はまだ製造段階なので、詳しい内容は公表できません。大容量かつ高性能で、リリースされれば大きな注目を集める画期的な新製品と申し上げるにとどめさせてください。
プロジェクトの進め方については、いかがでしょうか?
チームでは複数の機能ブロックに分けて業務を進めており、そのうちのひとつを担当しています。論理合成のプロセス自体は、設計支援ツールによって自動的に処理されるので、出力されるネットリストが設計仕様を満たすよう、適切な入力を与えるのがエンジニアの役割です。また、等価性検証では、RTLの抽象的な記述と、それを具象化したネットリストの回路構成が論理的に合致しているかをチェックします。
前職では「RTLが、どうしてそう記述されているのか」と疑問を抱いても、分からないまま作業せざるを得ませんでした。垂直統合型の当社なら、同じ部署の別のチームがRTLを作成しているので、私はそのエンジニアと会話しながら、論理合成の立場で感じた疑問をフィードバックしたり、変更・修正の検討を依頼したりするなど、力を合わせてプロジェクトをドライブできています。
下流とも連携します。論理合成の段階でも配置・配線のフロアプランを作成するので、配線が混雑するリスクが高いとか、遠回りで効率が悪いといった問題を発見したら申し送りをして、回路図を仕上げるP&Rチームに後を託しました。
このように、回路設計の川上と川下を結ぶポジションで、ビッグプロジェクトの広大な景色を俯瞰しつつ知見を拡大できたのが、私にはいちばんの収穫でした。
ピコセカンドの遅れにも手を尽くし、「動いて、役立って当たり前」を支える。
回路設計の仕事の魅力はどこにあると感じていますか?
ひとことで「泥臭いところ」です。大胆な工夫によって問題を一挙に解決できるようなものではなく、「論理合成の工程で問題が起きていないか監視し、問題が発覚したら可能な限り対策を講じる。チーム内で解決が難しい場合は、RTL設計者と会話し、工程の壁を超えた解答を得る」作業を地道に続けるのが、私たちのミッションだからです。
例えばですが、信号が仕様より2ピコセカンド遅れる、回路規模が大き過ぎて面積を食ってしまう、回路構成に無理があるようでタイミングが収束しない……など、問題は多岐にわたるため、対策に決まった答えはありません。チーム全員で粘り強く立ち向かい、経験豊富なエキスパート・RTL設計者・IPやツールのベンダーにも知恵を仰ぎます。可能な限り手を尽くした結果、すべての問題が解決し、開発のマイルストーンをクリアできて、ようやくひと安心、といったところです。
PCのSSDを思い浮かべてください。「動いて当たり前」で、コントローラーの存在を意識する人はいないでしょう。でもその陰に、苦労を重ねて当たり前を実現している開発エンジニアがいるのです。エンタープライズSSDも一緒です。データウェアハウスやAI、クラウドサービスの「役立って当たり前」を、実は私たちのプロジェクトが支えていると密かに自負できること。それがやりがいなのだと思います。
※本記事は取材時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合があります。(取材日:2025年8月)







